私 と 、き の こ 帝 国 。

「きのこ帝国が活動休止を発表した!」と、いう

1文だけをポンとSNSに載せて自分の中で終わり

たくはなかったので、記事にすることにした。

(このためにはてなブログ登録し直したぞ。)

 

まず「きのこ帝国とは?」って人へ↓Appleから。

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私の周りは音楽オタクが多く〝渦になる〟辺り

から騒いでたのを覚えている。でもその頃の私

の感性には合わなかった、から聞かなかった。

 

その後「湯を沸かすほどの熱い愛」という映画を

観た。とても感慨深い映画でラストの人の血を

表したのか愛を表したのか分からない不思議な

赤色の煙が煙突から静かに湧き出ていたシーン

は未だに焼き付いている。そんな映画の主題歌

が、きのこ帝国の「愛のゆくえ」だった。

全くそこに焦点を置いてなかったのに、流れた

瞬間、少し震えた。素晴らしかった。

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この曲がタイトルのアルバムを何度も聴いた。

その中でもめちゃくちゃ「moomwalk」という曲

が大好きになった。

(知らぬふりをしてまた抱き締めるから言えなく

なる 優しすぎるあなたを月が笑った)

この1節がなんとも素敵。隠し事をされている

相手に抱かれ、それを問い詰められずに許して

しまう主人公が、抱かれながら空を見上げると

月がそんな下らない優しさを持ち合わせた自分

を見下げて笑っていた..という所まで想像する。

 

Amazonのレビューを見ると、同じことを何度も

繰り返してるだとか歌詞が薄いだとか書かれて

いたが、私は聴き手に考えさせる歌詞を書ける

アーティストってすごく魅力的だと思っている。

直訳の歌詞なんて誰でも書ける気がするから。

なので、もっと彼女達の音と言葉が欲しくなり、

過去作も全て聞き漁った。もちろんそれ以降に

出た作品も何度もループしている。

 

私ときのこ帝国の物語をこれ以上書いても面白く

ないので、作品紹介を、私なりにしていきたいと

思う。少しでも興味を持って貰えたら幸い。

 

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1曲目のWHIRLPOOLから突き抜けてる。ほぼ、

(仰いだ青い空が青いすぎて)と言っているだけ。

だけなのに、良い。ワンフレーズで3回「あお」

という単語を使い、それを何回も繰り返す。

ただただそれが心地よく、情景が広がり始めて

このアルバムの物語が始まる。

AメロBメロという概念はなく、クラシックの様

な起承転結もない。ただ事象が起こりぽつぽつ

と言葉が落ちている。それが初期のきのこ帝国。

今作はゆったりしたり、ぼーっとしている時に

流したいような、比較的穏やかな作品に感じる。

この世界観はラストの足首まで続いている。

(ちなみに4曲目にGirlMeetsNumberGirlという曲

が収録されている、もちろん本人達はナンバガ

リスペクトしている。)

 

そして2013年、「eureka」と「ロンググッドバイ」

が誕生する。

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こちらは5曲のみ。1曲目からジャケ写みたいな

お花畑を走っているかのような音が流れ始める。

(愛おしい日々だけたまに思い出してね)という節

は、冒頭からアルバム名を表している。ここから

全曲、別れに繋がる物語が始まる。5曲もこんな

別れの歌が流れるのかと思うだろうが、そんな

単純なアルバムではない。先程も記したが過程の

事象が1個1個起こっている感覚で聞いて欲しい。

2曲目で(僕たちはいつも叶わないものから順番に

愛してしまう)と、1曲目と同じく別れが題材でも

少し違う角度から歌っている。だから飽きずに

最後まで聴ける。必ず聴き手の中に何かが残る。

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そしてこちら。もうこれはね、個々で越えて。

きのこの中でも、とってもディープな作品です。

轟音という点でもこの作品が断トツかと思う。

シューゲイザー感もますます増している。

個人的には1曲目の夜鷹がディープの頂点かと。

(生きる喜びという不確かだがあたたかいものに

惑わされつづけ今も生きてる)、そうだなぁ。

初っ端から生死感問われてる作品でジャケット

も真っ黒闇に目玉が浮かんでいるうずうずしさ

が滲んだものとなっている。

日常で誰もが感じる、間違いや虚しさを題材に

したアルバムだと思う。この作品は、聴くのに

とても力が要る。改めて実感させられ、空っぽ

になるから。でも終盤に近づき、きちんと希望

も湧いてくる。こんな気持ちにされるのは最近

のアーティストではきのこ帝国くらいじゃない

かと思う。完璧に良い意味で本当に凄いバンド。

 

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先に言う。私がきのこ帝国で1番大好きなCDだ。

ここにきてイメージが変わる。とても聴きやすい

ポップさが加わってくる。初期きのこ帝国好きは

聴き足りないくらい。明るい光へ向かう不安定な

このアルバムのバランスこそが大好きな理由だ。

1.2曲目と、ヒットナンバーの「東京」「クロノスタ

シス」が続く。だがここで終わらず聞いて欲しい。

この作品から今まで存在していたアルバム全体の

テーマというものが曖昧になる。ヒットナンバー

の次の3曲目で、(命の尊さなど失うまでわかりゃ

しないし今だけ今だけでいい こんな自分じゃどう

しようもない)と禍々しい雰囲気に急に飛び込む。

かと思えば4曲目にはアホクセーとか言いながら

現状をいつか打破しようとする前向きな曲になる

不思議なアルバム。ただ変わらず希望を失わない

という線がずっと繋がっている事を強く感じさせ

てくれる。私の特に好きな「あるゆえ」という曲が

それを表している。(悪態が止まらないのは信じて

やまない世界があるゆえ 性懲りもなく足掻くのは

愛してやまない世界があるゆえ)...。染みます。

 

そして2015年、デビューシングル「桜が咲く前に」

が発売されvo.佐藤千亜妃の美貌を活かしたMVの

効果もあり名が知れ渡った。同年発売がこちら。

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ジャケ写が急にクッキリとして、暖かみがある。

まさにそんな作品で人間の優しさが充満している

きのこ帝国の大きな世界への一歩を感じる作品。

テンポも軽快で、vo.の声が丸みを帯び、ピアノも

際立ってくる。鋭い音も抑えられている。だが

悪くなっているのではなく、闇からひょっこりと

出てこれたきのこ帝国の、変わらない愛への感情

が鳴っている。おかげで格段に聴きやすい。

ただゆるく歌っているのではなく、メッセージ性

より人への浸透性の高いアルバムだなと思う。

 

年表で行くと次は「愛のゆくえ」だが上記に記した

ので略す。時は飛んで2018年。去年。

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ここにきてまた表情が変わる。猫とアレルギー

のような暖かさに、更に過去作のメッセージ性

を上乗せした、今までを繋いだ作品だと思う。

きのこ帝国ファンがよく言う「きのこ帝国だけは

自分を許してくれる」という空気が広がっている。

優しさを優しさだけで、狂気を狂気だけで伝える

音楽は止めたのだろう。きのこ帝国史上よくある

CD第1位で、アルバム全体と言うよりも随所随所

好きな曲があってその間の曲もよく聴いたら好き

になれたというごく普通の感覚で聴けるアルバム

だと思う。現代に寄り添ってるきのこが聴ける。

 

以上、これまでの作品紹介。自分でもまとめつつ

聴いていて、新たな発見がたくさんあった。

きのこ帝国が活動を休止してもこれからも既存の

CDを聴いては新しいものを感じるし、変わらぬ

良さも感じて過ごしていくと思う。

オシャレな音楽やポップで聞き馴染みのある音楽

が流行した時代に、轟音をかき鳴らす唯一無二の

価値観を持った鋭い暖かさを持つバンド。

様々な場面で、たくさんの想いを馳せて、色々と

考えさせられたきのこ帝国の音楽を、変わらずに

愛していようと思う。

あと、解散ではないから、バンドが鳴らしてきた

音楽の様に 密かに希望を持ちつつ聞き続けたい。

 

今度、佐藤千亜妃さんソロのライブにまた行って

みたいなぁ、とか、思いつつ...。月並みの事しか

言えないけど。

素敵な音楽を届けてくれてありがとう。

これからも日常の片隅で鳴り続けてください。